渡部版 ”死を覚悟した瞬間”

50年間、生きてきた人生で、死を覚悟した瞬間が、僕にも何度かある。

 

大阪でのサラリーマン生活に見切りをつけて、新たな人生を我が故郷”松江”で模索していた20代での出来事である。

僕は、障がい者施設巡りをしながら、掛け持ちでアルバイトに精を出していた。その一つに木材屋でのバイトがあった。社長は子供の頃から可愛がってくれた親の友人であり、僕が尊敬する人物であった。僕の窮状を心配してくれて社長から声をかけてくれた。 

僕は、社長の心意気に感謝すると同時に「少しでも恩返しがしたい!」と与えられた仕事を一生懸命に 取り組もうとした。しかし、事はそう簡単には上手くいかなかった。元来 超不器用な僕は 強すぎる想いも空回りして、何をやらせても失敗の連続だった。それを見兼ねた社長が 直様 手を差し伸べてくれた。

「たけちゃん、大丈夫だけん。気にするな。ちょっと仕事が難しかったかもしれん。だけん、ここにある おが屑を集めて 下の工場の中にある 焼却炉で焼いてくれ」

と、この時も、優しく励ますように社長が声をかけてくれた。

涙が出そうになった僕は 「今度こそは 社長の期待に応えるぞ!」と意気込んだ

 

焼却炉に 火をつけて 僕は 大きな箱型のブルーシートに入ったおが屑を そのまま焼却炉へと投入した。すると ながーく ながーく 繋がっていた おが屑に引火。その状況に直面した僕は パニック状態になり 何を思ったのか 引火したおが屑を 反対に 焼却炉から取り出し始めていた。引火したおが屑は、工場内に 飛び散り 混乱した 僕の姿を 嘲笑うように 火の勢力を増やしていった。その瞬間、僕の大好きな社長の笑顔と僕の家族の顔が思い浮かんできた。

「絶対 火は消すんだ! 社長や家族に迷惑をかけてもいいのか!バカたけし!!」と 爆発的な勇気が突然、湧き上がってきた。その直後に 僕のとった行動とは!

 

続きは 次回の ”死の淵からの 生還トンネル」でご紹介します。乞うご期待😀

 

次は 太田和さんによる”炭のうんちく話”を我慢強く聞いていた心優しい奈良井さんです