被災地での障害者の今

NHKで【東日本大震災から1ヶ月経った障害者の今】をテーマとした二つの番組が先日、立て続けに放映されました。


まずは19日(火)の【福祉ネットワーク】を紹介します。

『被災した障害者 集団避難の人々』と題して、現地取材を続けていました。

岩手では福祉施設306箇所のうち、66施設が被災(全壊16箇所)し、宮城では490箇所のうち、

111箇所が被災(全壊27箇所)したそうです。これはたいへん深刻な事態です。

宮城県岩岸市の【ふくいん総合生活支援センター】から来たメンバー74名の

長野県伊那谷地区での集団避難生活についての様子が番組の中心的な内容でした。

1週間近く避難所での不便で不慣れた生活に限界がきていた障害者の人たちにとって、長野県の受入れは心底ありがたかったに違いありません。

「避難所はおにぎり二つとジュースだけの日もあった。ここはおかずもあってうれしい」

とほっとしたした様子でインタビューに答える人がいました。

温かな食物が食べられる、個室でゆっくりと睡眠がとれる、トイレがいつでもいけることでの安堵した気持ちが今回の集団避難者の一番正直なところだと思います。

しかし、中には[早く、岩城市に戻りたい。友達のいる施設に戻りたい。]という自閉症の利用者の方もいました。いくら便利とはいえ、不慣れな環境では、その変化に順応する方がたいへんだったのでしょう。2畳分の個室部屋に多くの時間、引きこもっていたそうです。


今回、この74名の障害者の受け入れを決断され、即動かれた長野県社会福祉事業団の山田優氏には心から尊敬の気持ちが芽生えました。何にも代えがたい最高の支援だと思います。これだけ短時間で、これだけの内容の支援ができるのは、今までの実績と不断の努力の成果がなければ到底できません。彼の人柄も含めた今までの実績が、多くの人の共感を得て今回の受入れ支援に結びついたのでしょう。今の私では到底できない支援です。山田氏のような力が私たち支援者にも求められます。


二つ目の番組は、4月24日(日)放送の

NHK『福祉の真価が問われている~障害者 震災1ヶ月の記録~』です。

何人かの被災された障害者とその家族にスポットをあてて現状の様子を取材されていました。この番組の中で私が一番胸打たれたシーンとは

このような状況においても他者への感謝や思いやりの気持ちを忘れない二人のある障害者の姿にでした。


今回の番組の主役の一人である多賀城誠(43歳)さんは、23歳の時に頚椎損傷の為、それ以降、首から下が麻痺してしまったそうです。

自力排便ができずに、家族が協力し合ってその介助にあたっていました。

ただし、自宅とは勝手が違い、避難所での排便は、人目が気になり、また被災の影響でつかれきった家族に負担をかけまいと、できるだけ水分を取らないようにしていたそうです.また、町内会長が今後の予定について多賀城さんをはじめ被災者のみなさんに説明されていた時にも

「一番たいへんな人は町内会長さんですね。市や私たち被災者との板挟みになって苦しんでいるのですから。」

と不慣れな環境で生活しなければならないストレスにより大きく体調を崩した時でさえも、他人の苦しみを共有でき労わうことができるこの人は、本当に立派です。カッコ良いです。


もう一人は、大山善美(54歳)さんです。寝たきりのお父さん、足の悪いお母さんとのマンションでの3人暮らしでした。自身も脳性麻痺の為、車いすでの生活を余儀なくされていました。いつも支援に来てくれていたボランティアさんが被災のため来られなくなり、マンションで孤立状態でした。

しかし、何とか同じマンションの人たちの協力により食物や水を提供してもらっているとの事でした。大山さんも多賀城さん同様、食物を提供してくれたマンション住人の方に対して「自分たちも何時間も並んでやっと買えた食物を私たちにわけてくださって本当にありがたいです。」との感想を答えていました。たしかにありがたい事ではあります。しかし、そのような他人の善意を受け取る事が出来たのも、大山さん一家の日頃からの近所の方に対する姿勢によるところが大きいと思われます。


今でも余震は続いています。自力で逃げる事が出来ない恐怖と闘いながらも、他人を思いやる心を常に持ち続けている障害者の人たちに、心から尊厳の気持ちを送ります。

もっともっと心の負担を軽くしてあげるにはどうしたら良いのかと考えさせられました。


(もし、ここ島根でも同じような大災害が起きたら)を想定して準備を進めていかなければいけないと思いました。この時に私たち支援者が、障害者に対してやらなければいけない支援について、迅速により効果的に安心した支援が行き届くようにこだまでも真剣に話し合わなければいけません。そう感じました。

                                  渡 部