W杯にそなえてなんとなく「ルパン三世」

ピットさんにお世話になって32インチの東芝レグザをかう。

レグザをえらんだのは、W杯の全試合を録画するためだ。

わが家には2台のテレビがあるものの、

わたしにはチャンネル権がなく、

このままでは満足な視聴ができない可能性がたかかった。

おねがいすればみせてもらえるとはいえ、

あんまり肩身のせまいおもいはしたくない。

というわけで、はじめて身銭をきってテレビをかうことにした。


テレビを所有したうれしさからか、

いつもなら本をよむ時間なのになんとなくテレビのスイッチをいれる。

テレビではおもしろい番組をやってなかったので、

まえからもっていたレコーダーをひらいた。

サッカーや清志郎のライブを再生しているうちに、

去年やっていた「ルパン三世特集」のなかの

『宝石横取り作戦』をみる気になる。


もう40年ちかくまえにみた作品だ。

そのときは視聴率があがらず、

23本でうちきりという異例の冷遇をうけたシリーズだが、

再放送のたびに評価がたかまり

あたらしいシリーズや映画につながったのはご存知のとおりだ。


ルパン三世はもちろん泥棒なので、

コツコツはたらいたりはしない。

かといって神経質に用意周到な準備をするタイプではなく、

やってることはかなりおおざっぱだ。

すきなことをすきなようにして人生をたのしむ。

若干10歳だったわたしはこのスタイルにすごくあこがれた。

学校の先生や親たちは、まじめにやるのが一番、

みたいなことをいうけど、

ルパンみたいにたのしむことを優先する生き方は

すごく刺激的だった。

ルパンのまえにも「ムーミン」にでてくるスナフキン

(いつも池でつりをしてるひと)にひかれたことがあるが、

ルパンのほうがはるかにリアリティがある。

しずかに詩的な生き方ではなく、

ガチャガチャと人生をたのしむラテン的なスタイルだ。

節約や勤勉さを大切にする思想とは正反対で、

たのしいこと、おもしろそうなことをげんきにおいもとめる。


40年まえの作品なのに、じゅうぶんおもしろかった。

演出は宮崎駿さんと高畑勲さんなので、

質のたかさは当然といえば当然だ。

あの当時(小学校4年生のころ)、

連絡ノートみたいなのがあって、

この作品のおもしろさを

かなり興奮してつづったことをおもいだした。

あのときの吉田少年はなにをおもったか。

ずいぶんうすよごれてしまったとはいえ、

あんまりかわらずそのまま中年になったような気がする。

いまだにルパン三世的なスタイルにあこがれる、

でも、やってることは

どこまでも小市民でしかないさえない中年だ。

(吉田 淳)