旅行にもっていく本

無人島になんの本をもっていくかが

定番としてよくかたられるように、

旅行にもっていく本をきめるのも、

そう簡単なことではない。

旅行のながさやタイプによって、

よめる時間やよみたくなる本は

いろいろちがってくる。

あんまり荷物になるのもいやだし、

かといってすくなすぎるのは不安だ。

こんどの旅行には、

『チャイルド44』(トム=ロブ=スミス・新潮文庫)を

もっていくことにした。

「2009年版このミステリーがすごい!海外編」の

第1位になっている作品なのに、

かったままずっとほったらかしになっていた。

このほかには、

『チャイルド44』をよみおえてしまったときの保険として

よみかけの『モゴール族探検記』をカバンにいれる。

でも、あぶないところだった。

本をよむ環境があんがいととのっていたし

(旅行スケジュールやいごこちのいい喫茶店)、

なによりも『チャイルド44』がすごくおもしろかったので

どんどんのこりの分量がすくなくなってしまう。

大事にだいじにページをめくり、

なんとか家にかえるまでもたせることができた。


ちょっとながい旅行のときは、

文庫本を10冊ほど

いろんなジャンルをまぜてもっていく。

旅行のためにとっておいたような本や、

普段の生活ではよめそうにないものや、

すでによんだことがあって、

またそのたのしさにひたりたいものなど。

文庫本といえども

10冊というとかなりのかさばるし、おもい。

わたしの体力と旅行のスタイルでは、

10冊がもっていける限度だろう。


このごろは電子書籍が登場するようになり、

かなりの量の本を1冊のリーダーに

おさめることができるそうだ。

そうなると、

旅行にもっていく本でなやむことはもうくなるのかもしれない。

いまはまだ過渡期だ。

あまり便利につかうことができない。

でも、次に長期旅行にでるころには、

電子書籍の市場もずいぶん充実していることだろう。

本をめぐる旅行のやり方は、

これからどんどん変化していきそうでたのしみだ。

(吉田 淳)