戸をしめる島根のネコ

ある本をよんでいたら、部屋の戸をしめるネコのことがかいてあった。

テレビがいろんなニュースをながしている、という場面で


島根県にいる賢い猫が紹介された。

猫は自分で窓を開けて外に出て行くのだが、

出たあと自分で窓を閉めた。

飼い主がそうするように教え込んだのだ」


一般的に、ネコはじょうずに戸をあけられるくせに、

しめることはしない。

ひかえめにいっても、

世界に数匹いる可能性を否定はしないが、

彼ら(彼女たち)はかなりめずらしいネコといっていいだろう。

もし自分でしめるようしつけることができたら

ノーベル賞ものだ、という

もっともらしいはなしさえ

きいたことがある(ような気がする)。

それが、ほんとうにいたなんて。

しかも島根県のネコだなんて。


「ある本」とは村上春樹の『1Q84』のことで、

なんとなくかいそびれていたのを

すこしまえにようやくかいもとめ、

先週からよみはじめている。

すごくおもしろくて、

この先はなしがどう展開していくのかにワクワクする

たのしい読書となっている。

その1冊目の3章という、

ごく最初のところで島根のネコが登場したのだ。

あの村上春樹が島根のことをかいてくれるなんて、

というほどにはいかれてないが、

それでもあの『1Q84』に

島根県にいる賢い猫」なんてあると、

場ちがいなところで島根県にであった気がしておどろいてしまった。


きっとこのはなしは

村上さんがつくりだしたひとつのイメージであり、

事実ではないだろう。

これに刺激されてうちのネコたちにぜひしつけを、

という無駄なことはせず、

ピピとチャコの背中をなでて

「島根の賢い猫」のはなしをつたえるだけにとどめた。

(吉田 淳)

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