日本サッカー世界で勝つための戦術論

こんな本がよみたい、

とおもってたそのものが書店の棚にならんでいた。

西部謙司著『日本サッカー世界で勝つための戦術論』(青春出版社)。

これまで西部さんは世界の一流チームについてはかかれていたものの、

日本代表についてあまりふれられてこなかった。

戦術論について、きわめてわかりやすくかかれる西部さんが

いまの日本代表をどう評価するかとても興味がある。

なにが問題点で、どうしたらあのチームが

「世界を驚かす」ことができるのか。


いろいろとかいてある日本代表の特徴を

わたしなりにまとめてみると、


○日本チームには軽量な選手がおおく、

身体をぶつけあってのプレイが得意ではない

○日本の特徴は正確なパス回し


という2点に整理することができる。


軽量ということから、

ロングカウンターをしても

身体をあてられるともちこたえられないし、

自陣にひいてまもっても、

空中戦やこぼれ球の奪い合いにはつよくない。

ボールを「止めて蹴る」という技術はたかいので、

ポゼッションをたかめ、

できるだけ相手の陣内でプレイすることが基本路線となる。


ポゼッションをたかめたからといって、

それがそのまま得点にむすびつくわけではないが、

かといって、カウンターをねらえるほどの

身体的なつよさをもったフォワードはいない。

攻めるためにも、守るためにも、

ボールの支配率が日本の生命線になる、

というかんがえ方だ。


たしかに他の地域のW杯予選をみていると、

身体をぶつけられてもあたりまえにボールをキープしており、

日本とはちがう種類のサッカーであることがわかる。

こうした相手とおなじ戦略でたたかうことは

日本にとって得策ではない。


他にも

「W杯を勝ち抜くための戦略」

「日本代表に本当な必要な人材とは」

「日本サッカー世界一への未来地図」

と、日本が強くなるための道筋がまとめられており、

非常に興味ぶかくよむことができた。


ところが、このようにつよくなるための戦略を理づめで説明しておいて、

最後には「大どんでん返し」とでもいうべきしめくくりがまっている。


「4年に1度、『世界一』になれるのは、

当たり前だが世界に1チームだけ」であり

「大半の国々はそんなことまで望んでいないのだ。

自分たちらしくプレーし、それで生けるところまで行けばいい。

アイルランドスコットランドは小国だが、彼らはいつも

『負けっぷり』がいい。選手もサポーターも自分らしく戦い、

胸を張って去っていく」


日本が「世界一」をめざすのもいいが、

「負けっぷり」がいい国をめざすのもまた

ひとつの選択だというのだ。

サッカーの競争にはきりがない。

たとえW杯で優勝してもそれでおわりではなく、

次には連覇をもとめられるし、

他のタイトル戦もいくらでもあって、

そのすべてに勝ち続けることは不可能だ。

けしてはじめから競争をあきらめるのではなく、

自分たちの身の丈にあったチームを

ほこりをもって応援するしあわせもまたある、ということだ。

わたしの人生観にちかく、

意表をつかれながらも、非常におもしろくよむことができた。

(吉田 淳)