熟成ウイスキーのように

「熟成ウイスキーのように」という題で

オシムさんが6月30日づけの朝日新聞にコラムをよせている。


「チリは日本にとっては参考になる。

すぐにブラジルのようにはなれないが、

規律と組織力をもって

アグレッシブな戦い方をすれば、

チリ以上にうまくやれる。

ただし、忍耐力と時間が必要だ。

上等なウイスキーを熟成させるように、

数年のスパンでぶれない方針を持たなければならない」


これこそがオシムさんがいいたかったことだろう。

日本代表は、本大会まえにそれまでのやり方を守備重視に修正した。

その結果、まもりはかたくなったが攻撃のあつみはきえている。

開催まえ数週間におこなわれたこの突貫工事が

さいわいにもうまく機能し、

グループリーグをかちのこるという「成果」をあげた。

しかし、「数年のスパンでぶれない方針」が

存在したわけではもちろんない。

オシムさんとしては、自分がとちゅうまで手がけた

「日本らしいサッカー」の頓挫に

本心では複雑なおもいがあるはずだ。

ベスト16という「成果」からのみ

これからの方針をさぐるのではなく、

日本ならではのサッカーを構築してほしいという

ねがいを「熟成ウイスキー」という言葉からよみとることができる。


W杯は準決勝がおこなわれ、

スペインとオランダが決勝戦をたたかうことになった。

宇都宮徹壱さんは、

「『リトマス試験紙』のような準決勝」として

準決勝にのこった4カ国のうち、

どのチームをこのむかで

そのひとの「サッカー観」が確認できるのでは、としている。


「オランダは『理想主義から現実主義へ』。

ウルグアイは『とにかく勝てばよい』。

ドイツは『若さゆえの勢い』。

スペインは『美しさの現状維持』。

どのチームにシンパシーを感じるかによって、

その人の『サッカー観』があらわになるという、

さながら『リトマス試験紙』のような

準決勝になりそうな気がしてならない」

宇都宮徹壱の日々是世界杯2010)


応援していたチリがやぶれてしまったので、

わたしが支持するのはスペインのサッカーだ。

「美しさの現状維持」対「現実主義」となった決勝戦は、

これからのサッカーの方向性をしめしてくれるだろうか。

(吉田 淳)