表記「コンピューター」を歓迎する

すこしまえの「ヤフー!ジャパン」に

「コンピュータ」から「コンピューター」へ

という下記の記事がのっていた。


マイクロソフト日本法人は25日、

同社のソフトウエアや説明書のカタカナ表記で、

音を伸ばす場合は単語の末尾も、

長音符号の「ー」を付けるようにすると発表した。

新製品から順次変える。

これまでは末尾の長音記号は省いていた。

利用者から、

ふつう使われている表記・発音に合わせるべきだとの要望があり、

新聞などで長音表記が原則になっていることも考慮。

91年の内閣告示も長音符号の使用を推奨しており、変更を決めた』


ただしい判断である。

なぜ日本人が日本語をかくときに

「コンピュータ」などと「ー」をはぶき、

みじかくとめるのだろう。

いつからそうなったのか、

まえから疑問におもっていた。

「コンピューター」より「コンピュータ」が

より高級だという錯覚、おもいこみをそこにかんじ、

反対に、「コンピュータ」をつかうひとは

はずかしくないのかと不思議におもう。

理系のひとは「コンピュータ」で、

文系のひとは「コンピューター」、

というわけかたはおおざっぱすぎるだろう。

ほとんどのひとはいまや「コンピュータ」を

なんのうたがいもなくつかっている。

(ちなみに『ウェブ進化論』の梅田望夫さんは「コンピュータ」だし、

『負け犬の遠吠え』の酒井順子さんは「コンピューター」

をつかわれている。日本語をあつかうプロである酒井さんが

「コンピューター」を注意ぶかく、意識的にえらばれているのはさすがだ)。


「コンピュータ」だけではなく、

長音記号は意識的にさけられている。

「データ」にしろ「メモリ」にしろ

はじめは「データー」であり「メモリー」だったはずなのに、

いつのまにか「より本物」っぽい表現にかえられてしまった言葉はおおい。

「データー」も「メモリー」も、

もとは外国語だったけれど、

つかわれるうちに「人口に膾炙」し、

日本語の単語としてみとめらていたはずだ。

それを、わざわざ英語を母語とするひとにすりより、

日本語からはなれた「データ」のほうが

より「本物」っぽいと位置づけたひとはだれだ。

漢字がおおければ高級な文章、

という現象と根はおなじなのではないだろうか。

ようするに中身はなく、ただ気どっているだけなのだ。


我々は日本語をかいているのである。

そのときに大切なのは、

だれにでもわかりやすく、論理的な文章かどうか、

ということであり、

イギリス語やアメリカ語にちかい発音か、

ということとはなにも関係がない。

我々は、どうどうと「コンピューター」とかけばいいのだ。

(だいたい、「コンピュータ」とかいているひとは、

自分が会話で「コンピュータ」と発語し、

そしてその発音は発音記号どおり正確に【computer】となっているのだろうか。

そんなのは無理なことであり、だからこそ

「コンピューター」がよりただしいといえる)


マイクロソフトの企業イメージはあまりよくないが、

今回の発表については素直に評価したい。

(吉田 淳)