心の声

「思いを汲み取る」


言葉が話せる人でも、本音や思いを言えない、言わない人がいます。

遠慮や我慢、性格などが影響します。

そんな時には、表情や言葉の端々にある感情や思いを汲み取る必要があります。

では、言葉が話せない人はどうでしょう。


今日、利用者さんの涙を見ました。


食後の歯磨き中、突然表情が曇り、涙がポロリ。

仕上げ磨きのあとだったので、痛かったのかなと思いました。

「ごめんね」と謝ると、すぐに笑顔が戻りました。

しかし、洗面所から出て、自分の席に戻る前に、またしても涙がポロポロ。

先輩職員さんに報告すると、

「昔の嫌なことを思い出して泣かれることがあります」

「理由はわからないんです」

とのこと。

しばらくすると、嫌な思い出を振り払うような明るい笑い声が復活していました。


専門学校での認知症の授業で、「きく」という漢字を習いました。

「聞く」、「聴く」、「掬」の三つです。

「聞く」と「聴く」は一般的ですが、「掬」はあまり見慣れないと思います。

「掬」は「掬する(きくする)」という言葉で使う漢字です。

意味として、両手で水などをすくいとる、思いをおしはかるなどがあるそうです。

授業の中で先生から、

「利用者さんが発する言葉や思いを、一滴もこぼさず掬することを心がけてください」

と言われた記憶があります(うろ覚え)。


言葉が話せないひとはどうでしょう。

思いを察して、汲み取ることで真実にたどり着けるでしょうか。

時間はかかったとしても、たどり着きたいですね。


今日流れた利用者さんの涙は、現時点では原因はわかりません。

どんな悲しいことがあったのかもわかりません。

この先、決して忘れることができない出来事なのかもしれません。

でも、新しい記憶で上書きできるかもしれません。


悲しい思い出を上回る楽しい思い出をつくる。

やりがいはありそうです。



以上、人生いろいろあるなと感じる八壁でした。


明日は近藤さんです。