突然の訪問者

“ピンポーン”

「こんばんわー。夜分遅くにすいません。」


先日の事である。夜の9:00という時間帯にも関わらず、その訪問者は突然、我が家を訪れた。

ありえない時間の訪問とあって、警戒心を全快に、不遜な表情で、ドアを開ける。

すると、背が高く、30代と思われる男性が玄関先で佇んでいた。

目はうつろで、表情には生気が失われているほど、疲れきっていた。

その佇まいから一瞬、情に流れそうになり、自分から言葉をかけようと思いたったのだが

昨今の詐欺事件を思い返し、強い意志で無言を貫いた。

すると、ロボットのような淡々とした口調で、今回の訪問の趣旨と理解の為の説明ガイダンスが始まった。


「法的遵守に従い、今回の依頼にきました。○○○テレビ局の会長の・・・・・」


というような内容を弱々しい声で・・・


しかも淡々と説明をする男性。

僕は自分や家族を守る為に「疑う」を優先とした対応に終始した。

玄関の中にも入れずに、威圧的な態度で、こう言い放った。


「普通、この時間帯に来る来訪者をほとんどの人が受け入れるわけがないと思う。

 あなたもそうでしょ。」


彼は、うつむきながらも「うんうん」と僕の意見を噛み締めるがごとく受け入れてくれた。瞳は涙で潤んでいた。

何秒間経ったのか?今となっては計り知れないのだが、無言の時間がしばらく続いた。

そして、僕は気づく。彼が誠実な人間で信用に値する人間であるということを・・・

その後は言うまでもない。


その晩は、珍しく明け方まで眠りにつく事ができなかった。何年ぶりだろうか?こんなに自分自身に苛立を感じたのは・・・。


彼が悪い訳ではない。いや、悪いどころか、その彼は尊敬に値する人物である。と僕は切に思う。

それよりも、大本の親会社に対して怒りを覚える。どうしてこのような仕組みを作りだしたのかを問いたい。


同時に、このような仕事にでも果敢にチャレンジを続ける彼の姿勢に対して、きちんと評価ができる世の中であってほしい。

                                 渡部でした。

                                 次は田崎さんです。