誰も知らない

是枝裕和監督作品

          【誰も知らない】

その主演である柳楽優弥氏が

第57回カンヌ国際映画賞の最優秀主演男優賞を受賞した事で大きな話題となり

ご記憶のある方も多いと思われます。


先日、この映画を初めて鑑賞しました。


巣鴨子ども置き去り事件を題材とした映画だと知っていたため

(かなり重いテーマの映画だろう。)とある程度、覚悟を持って鑑賞しました。

しかし、予想を覆して、日本人の他者に対するやさしさや子ども達の生に対する力強さ

愛情の尊さ等、未来に希望を抱く事のできる映画となりました。


母親が帰って来ないのではないかという大きな不安の中に身を置きながらも

ささいのない出来事に対して見せた4人の子どもたちの屈託のない笑顔から気づかされた事は

是枝監督の現代の若者や子ども達に向けた願いです。

一方でもう一つのメッセージがあったように僕は受け取りました。

それは、“現実の恐怖”についてです。

信じられないような現実が今のこの地でたくさんおきている現状に対して

僕たちへ警響を鳴らしているのでないかと・・・・。

未来の日本を案じて発せられた是枝監督の若者たちへ向けたメッセージ映画だと

僕は感じました。


しかし、結末は悲しいものでした。

末っ子のゆきが椅子から落ちて瀕死の重症をおいながらも

子ども達の幸せなワールドしか知らなかったが為の弊害により命を落としてしまうという終わりかたでした。


亡くなった女の子の年齢は6歳ぐらいに思えました。かわいい女の子でした。

寝る時は小さなぬいぐるみを抱いていました。ぬいぐるみを大切に大切に抱きしめていました。

自分の娘と重なり、涙が溢れ出てしまいました。悲しくて悲しくて涙が止まりませんでした。


このような思いは誰にも味あわせたくはありません。そのような社会であってはいけません。

でも、僕は不思議と悲観的にはなってはいません。

日本人の本来の気質は情に深くて他者にやさしい人間であり

現代でもなお、多くの人が困った人を助けてあげたいと思っています。僕はそう信じています。


                   「誰も知らない」

のではなくて

                   「誰も知ろうとしない」

いや

                 「誰も知りたいけど知るのが怖い」


それが現在の多くの日本人の心を表した言葉ではないでしょうか。


一歩を踏み出せる勇気が必要な時代になってきたのかもしれません。

自分にそれができるのか?今はまだ葛藤中です。

                              渡部