『野宿入門』その後

かとうちあき著『野宿入門』に

ふかくこころをうごかされたわたしは、

かとうさんが編集長をつとめる

野宿野郎』をネットで注文した。

2004年に創刊されてから

これまでに7冊が発行されている。

そのうち6号は絶版ということで、

のこりの6冊をまとめがいした。

おくられてきた『野宿野郎』には、

かとうちあきさんからの手紙

(というかメモ)もそえられていて

かとうさんのファンとなったわたしはたいへんよろこぶ。

あてなは「スバラシイ吉田さま」だ。

スバラシイだなんて、

そんなにもちあげてくれなくても、と

けっこうその気になっていたら

かとうさんはだれにでも「スバラシイ○○さま」と

ほめたたえるひとであり、

ものすごくかるい「スバラシ」さであることを

野宿野郎』をよむうちにしることになる

(でもまだうれしい)。

メモのほかに「野宿占い」のおみくじが2つと、

「さいごの野宿野郎」と題された

絵はがきが1枚同封されていた。

おみくじのひとつは「タンポポを踏んで寝ていたね」で2点、

もうひとつは「もーいやだ寝てしまへ」で9点だった。

なんだかんだですごくうれしい。

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前回にもかいたとおり、『野宿野郎』のサブタイトルには

「人生をより低迷させる旅コミ誌」とうたわれている。

そうだろうとおもう。

ちょっとよんだだけでも

とてもたかみにはあげてくれそうにないことがわかる。

でも低迷というか迷走というか、

「間違える」ことにすごくひかれるわたしにとってのぞむところだ。

かとう編集長の意向にそって

これからもおそれず低迷したいとおもう。


活字がちいさすぎる記事があったり

(ページよってばらばら)、

あまりにもマニアック、というところもあるにせよ、

全体としてはかとうさんの野宿ずきが

いろんなページからつたわってくるたのしい雑誌だ。

どうやらいったん原稿をプリントアウトしてから

きったりはったりして編集して

印刷にまわしているらしい。

手づくり感、というかまさに手づくりだ。


第1号の目次は

・1号目のごあいさつ

・どきっ 寝袋写真館

・ねぶくろにはいって

・特集 野宿、100人に聞きました

(ほんとは25人にしかきいてない)

・第一回 けきょくなんなんだ

・野宿についてのぐだぐだ考察記

・僕らの野宿ライフ

・時にはトイレの中で

・第一回 おじさんはトイレット博士

・第一回 ちょっと時差ぼけ

・野宿人育成プロジェクト 第一回 THE 誕生日野宿

・旅行案内第一回 巡礼トラックで旅する

・野宿アンケート

となっている。


2号目の特集は「お遍路野宿」で、

3号は「1周とか、横断とか」だ。

おもしろい記事もあるし、

とちゅうでよむのをやめるのもある。

でも、おもしろがってつくっている気楽さが

いいかんじででている。

きっともうからないだろうけど、

こういう雑誌づくりにかかわるのは

さぞかしたのしいことだろう。

「THE 誕生日野宿」なんて

やってくれるひとはそういないので、

だれがさせられるかをめぐっての

いけにえさがしがなまなましい

(第3号はだれもしてくれるひとがいなかったのか

かとうさんのお母さんが登場する)。

「誕生日を野宿中に迎える。

その年はいいことがあるに違いない」

というコンセプトのもとに

むりやり誕生日野宿をさせられたひとは、

そのあと「どんな効果があったか」を

編集部からしつこくきかれることになる。

「なにもいいことがない」と答えているのに、

「でもこうやって野宿にさそってくれる

仲間ができたじゃないですか」、とかいって

すべてを野宿効果にむすびつけてしまう

むちゃくちゃぶりがすごくおかしい。


椎名誠さんが編集という仕事について

「(ある雑誌をつくってて)わかったのは、

雑誌は会議で作っちゃ面白くないんだということですね。

雑誌というのは一人の個性が強引に作らなければ面白くない。

たとえば花森安治の『暮らしの手帳』みたいにね。

会議で作っている雑誌というのは紙面を見ればわかりますね」

とかいている(自走式漂流記)。

野宿野郎』も、うちあわせとか相談はあるにしても、

きっとかとうさんの個性を全面にだして

つくっている雑誌なんだろう。

だからおもしろくていきおいがある。


わたしの野宿デビューの日はまだきまっていない。

1回目は1回しかないから大切に、

というかとうさんのアドバイスもあるので、

あまり周到な準備はせずに、

ほどほどにひどい目にあって

おもいでぶかい野宿となるよう配慮したい。

しつこいようだけど、

だれかいっしょに野宿デビューしませんか?

(吉田 淳)