朝のキス

僕には3人の子どもがいる。

中一の長女、小5の長男、3歳の次女の3人兄妹。

みんな、個性が豊かな子どもたちで

幸せなことに大きな病気もなく元気に育ってくれている。


しかし、子どもたちの世界でもいろいろな問題があり

次女は別として、長女と長男には問題は小さいとはいえ

いろいろと悩みがあるようだ。


特に長男は昔で言うガキ大将。

自分の思いとは裏腹に

ついつい感情的になり汚い言葉や手が出てしまう事もしばしば。

それで問題になったことも何度かあった。


親である僕は、「親の責任」を第一と考え

いつも相手の気持ちを第一優先していたように思う。

今でもそれは間違えではなかったように思うのだが

よくよくその場面を振り返れば、長男の本当の気持ちを

理解してあげられなかった気がする。

何か伝えようとして一生懸命伝えようとしている長男に対して

結局は【疑いの言葉】を投げかけ、強引に納得させていたような

そんな気がする。

一応は子どもの意見を聞こうという姿勢を見せようとはしているのだが

自己満足の世界で終わっていたようだ。

聞いただけで、全く受け入れていなかった。

最後には「ごめんなさい。もうやりません。」という

言葉を何としても引き出そうとしていた。


しかし、最近というか、実は昨日のことなのだが

ある問題に対して問い詰めた時(今までもそうしていたのではないか?)

長男が「え、なんで。なんで、そんなことになったの?」という表情で絶句してしまい

その後、しくしくと泣き出してしまった。

その瞬間、ハッと気づいた。

「そうなのだ。この子は、本当に悪気はなかったのだ。

本当に相手を思って、良かれと思ってやった行為だったのだ。」と。


早速、昨晩、長男を呼んで話をした。

心から謝罪した。

本人は「ありがとう。」ときらきらした瞳で僕を抱きしめてくれた。


ちょっと恥ずかしい話だが

長男は小5にもかかわらず

ほとんどの朝、こっそり玄関に出てきてキスをせがむ。

このことは家族だれ一人として知らない二人だけの秘密だ。

男同士で気持ち悪い気もしていたが、そう感じていた自分が今では恥ずかしい。

渡部家で一番やさしい心を持っている長男。

今日からは自信を持ってキスをしたい。            渡 部