『ピーターの法則』創造的無能のすすめ

新聞の読書欄に

ピーターの法則』(L・J・ピーター=R・ハル)が紹介されていた。

以前よんだときに、ずいぶん刺激をうけた。

わたしの頭のなかは、

いまだに「ピーターの法則」に

支配されているかもしれない。


「あらゆる組織は無能化する」というのが

ピーターの法則」だ。

わかりやすくイメージするために、

組織における昇級を、

階段をあがっていく状況にたとえてある。

Aさんは営業マンとして優秀だったので昇級し、

1段あがって課長となった。

そこでも抜群の成績をあげると、

もう1段うえの部長に抜擢される。

しかし、そのポジションがAさんにとって荷がおもすぎた場合、

周囲の期待にそえずにつらい日々をおくることになる。


営業マンとして優秀だったら、

組織はどうしてもAさんを次のポジションにすすめてしまう。

そうした昇級を、Aさんが無能化するまでつづけてしまうのだ。

部長になることはAさんにとってふさわしいことではない。

企業人として、同期社員との競争にはかったかもしれないが、

自分の能力以上がもとめられる地位にいることは

Aさんにはストレスでもあるし、

その組織にとってもマイナスな状況だ。


問題は、あるポジションで優秀だったとき、

組織はかならずその人を次の段階におくってしまう、という点にある。

その結果、管理職のおおくは無能レベルにたっしてしまったひとたちで

しめられることになる。

自動的にそうなってしまうことがこの法則のおそろしいところだ。


この法則は、組織における個人だけでなく、

国家レベルの「昇級」にも適用できる。

すこしまえに国としての日本は無能レベルにたっした。

アメリカ合衆国もそうであることが、

最近のできごとでようやくあきらかになった。


では、無能レベルにたっしないためにはどうしたらいいのか。

ピーター氏が提案するのは、

創造的に無能をえんじることだ。

「あいつは優秀だから昇級させよう」と

周囲がおもわないよう、

適度に失敗をまぜて仕事をすれば、

本人にとっても、その組織にとっても、

しあわせな状態がながくつづく。

日本なんて国にすごい役割を期待されてもできっこないので、

ダメな国のふりをしておいたほうが

(ほんとうにダメだったりして)

日本のため、世界のためだ。


それでは、こだまはどうだろう。

もしかしたら、

もうすでに無能レベルにまでおしあげられてしまったのかも、

という心配もすこしある。

さいわいにして、もしまだ間にあうなら、

できっこない役割をになうより、

「こだまはいいサービスをしてくれるけど、

ときどきポカがあるからなー」、

とおもわれるぐらいの

不安定さをもちあじにしたほうが、

利用者にとっっても、こだまにとっても、

おたがいにしあわせかもしれない。


わたし個人についていえば、

もうとっくに無能レベルにたっしてしまった。

ほんとうは、もうすこしはやく

創造的無能を演出するべきだったのだ。

できもしないポジションでストレスにさらされるより、

「あぶなっかしくてまかせられない」

という評価をかちえるほうが、

こだまにとってもわたしにとってもしあわせだったのに。

(吉田 淳)