家出親父

もう7,8年前の事件だと記憶します。実は僕、一度だけ長期家出をしたことがあるのです。

それも野宿生活。なんと1週間、車中泊で生き延びたのです。

きっかけは?、というと・・・。

おぼろげに記憶するところでは、入浴中の奥さんに「帰ったよ。」と声をかけたら、「*******」と最高に腹のたつ嫌味を言われ、切れた僕が壁に向かって前蹴りをして穴をあけてしまったのです。それも改築したばかりの新品の壁に・・・・。

その時の奥さんの顔は忘れられません。せまりくる恐怖。まるでリングの貞子のようだった・・・。


奥さんに対してはらわたが煮えくり返り「このやろ~。」と怒りに震える自分がそこにいたのです。「おちつけ~。おちつけ~。たけし~。」と自分に言い聞かせようと努力したのですが、しかし、怒りがおさまりません。

「よし!家出しよう。」。心が決まれば、あとは一直線。バッグに着替えを詰め込み、義母に「お母さん、しばらく家を出ます。でも心配しないで下さい。友人宅に1週間ほど宿泊してから帰りますので・・。では行ってきます。」と挨拶をしてから家をあとにしました。なんて律儀な男なのでしょう。しかし、友人など当時の僕には一人もいなかったのです。まるで、ホームレス中学生ではありませんか。


気がつけば、忌部の千本ダムのほとりに車を止めていたのです。所持金は1万円。家出をして心細くなるのではと思いきや、何だかわくわくと胸が躍るではないですか。「よ~し、まずは腹ごしらえだ~。」と近くのローソンへ行き、弁当とビールを購入し、千本ダムの水面にうつる月を見ながら、夕食タイムを満喫しました。10月という季節にも恵まれ、車中での睡眠も問題なくとれました。

なんと、5日間、この生活を満喫したのです。所持金もなくなった事から義母へ連絡をすると、「あ~よかった。早く帰ってきなさいね。」とやさしい返答。「う~ん、持つべきは家族です。ありがたや~。」急いで帰ると、2人の子どもたちが「おとうちゃ~ん。」と抱きついてくるではありませんかー。「本当に帰ってきてよかったー」と思う一瞬でした。


そして奥さんのもとへ。シャレのつもりで「健史一等兵、ただいま、本国に戻りました!」と敬礼しながら言うと・・・・。幸せ気分も束の間、「あら、早かったわね~。もうご帰還?。」との嫌味を一発かまされました。【ブチッ!】「こ、こ、このやろ~。」と腹底からわきあがる怒りがまたもや爆発。「おう、おう、また家出してくるけん。いい加減にしろ~。」とダッシュで部屋を飛び出す僕。心で「巴菜、哲平、そしてお母さん。ごめんなさい。再び旅に出てきます。」とつぶやきながら車に乗り込みました。し、し、しかし・・・。車の鍵がないのです。どこを探してもないものはない。しばらく考えこんでいると携帯電話に着信が。相手は奥さんからでした。内容は「晩飯ができているから戻って来い。」とのこと。すぐに戻ればいいものを、カッコつけてしまい、「わかった。今、出雲にいるから1時間ぐらいで戻る。」と答えたのです。その間の車中での時間が長かったことといったらありゃしない。意地をはったら損しますね。

この時点で私の家出生活はピリオドをむかえたのでした。お・し・ま・い。


追伸:近々、長期家出Part2を実行する予定です。宿泊先を募集中。連絡、待ってます。     渡部より