椅子 10
座ると一時の癒しを得ることができるケド…もうその椅子に座って癒される時が来てほしくない椅子があります。
1年と3ヶ月前、その椅子に座って大きなお腹をさすりながら翌日に会える息子との対面に胸をワクワクさせていました。
その数日後、生まれたばかりの小さな息子を抱いて幸せいっぱいで座っていた椅子にまた、座ると事になるとは思ってもいませんでした。
窓辺にあるその椅子は病室の椅子とは思えないほど、ゆったりと座れる椅子です。
1年前はこれから始まる息子との生活にワクワクドキドキ…。一緒に外を眺めていました。
でも今回はそんな椅子に座る事なく、1m程ある柵に囲まれたベッドの上で、息子を抱きながら窓辺の椅子を見ていました。
ドキドキもワクワクもなくただただ息子が安心して眠れるように、点滴が抜けないように…気をはるばかりで椅子に座る事などありませんでした。
2週間を過ぎると薬が効きはじめ体温が落ち着いたので点滴もとれ、ベッドから降りても良いと先生の許可が出ました。
私達は久しぶりに柵を下ろしベッドから降りました。私は無意識のうちにあの窓辺の椅子に座り、楽しそうに歩き回っている息子を見守っていました。
そんな私の所へ「ぉか~ぁチャン!あっこ~(抱っこ)!」と言いながらよじ登ってくる息子。自由になった事が嬉しいようで満面の笑みでした。
そんな息子を抱きしめながら窓の外を久々にゆっくり眺めました。長かったベッド上のストレスをまたこの椅子で癒す事ができました。
もうしばらく私の息抜きの場所になりそうですが…もう次に座って癒される事がない椅子であってほしい椅子です。
皆さんにはご迷惑をおかけしてしまってすみません m(_ _)m 山岡