誇りの高さは、孤独の深さだ

前回のつづきで高野秀行さんの本について。

『巨流アマゾンを遡れ』で

高野さんはアマゾン河口の街ベレンをおとずれる。

たまたましりあった

屋台ではたらく女の子カテリーナが、

おなじ17歳ぐらいの女の子を相手に、

わったビール瓶を手にしての、

はげしくケンカする場面にでくわした。

すごくぶっそうなのにだれもとめない。

高野さんは、アマゾンの豊かさ、おおらかさは、

人々の誇りのたかさからきていることにだんだんと気づく。


「帰り際、例のカテリーナが自分の屋台の奥で、

ひとりぽつんと立ちすくみ、唇をじっとかみしめているのを見た。

かわいそうだったが、私がかける慰めの言葉などない。

誇りの高さは、孤独の深さだ、カテリーナ」


いくつかの現象から

たちまち物事の本質をみぬく

高野さんのすぐれた感性と、

それを的確に表現する筆力がすごい。

「誇りの高さは、孤独の深さだ」

なんて、サラッとかいてみたいものだ。


いまよんでいる高野さんの本は

『アヘン王国潜入記』(集英社文庫)。

ゴールデン・トライアングルにある村で7ヶ月くらし、

じっさいに自分でケシもそだて、

アヘンがなぜこの地での生活に必要なのかをしらべあげている。

中国語やタイ語ができるという語学力はたしかにつよい武器だけど、

なによりもすごいのは

調査対象むけた正確な取材力と、

調査からえた情報から論理的に本質をみちびきだす思考力だ。

高野さんの本は、

どれもかるさをよそおいながらも、

第一級のルポルタージュとなっている。

(吉田 淳)