「書くこと」

「書くこと」

今、県立美術館では「川端康成東山魁夷」の展覧会が行われていて、二人の親交を背景に、

東山魁夷の絵画や川端康成が収集した美術品などが展示されている。


その中で私は、小説の装丁や親交のあった人たちとの往復書簡等の展示に目が留まった。

書簡の数々からは、その筆跡をはじめとして、当時のその人たちの関係性や日常生活が

垣間見れるようで、雲の上の存在のような著名な人たちが、ぐっと近くに感じられて、

写真の中の時代やその人たちの存在の輪郭が鮮明に浮かんでくるようだった。


私は、何人かの人たちと文通をしている。この時代なので電話やメールもしているのだが、

時折、葉書きや便箋を用いたくなることがある。

それは、気に入った葉書きや切手を見つけた時や書いた方がいいなぁという気分の時があるからだ。

メールの登場でこの数年は回数が減りゆく傾向にあるものの、やはり、長年続いている送り送られて

くることの心持ちや手元に触れ、残っていく書簡たちは写真などと同様に私にとって大切な一部に

なっている。


美術館の展示を眺めながら、今の著名な人たちが過去の人となって展覧会が催された時、このような

書簡のやりとりなどの展示はどうなるんだろうと思った。

メールのプリントアウトになっているのかな・・・、個人情報は所々塗りつぶされているのかしらん・・・。

そもそもそんな書簡が残ってなければ、こういう展示はされないかぁと思いながら、今の時代の

親交のあり様を展覧会の一部として展示する時はどんな感じになっているんだろうとあれこれと

想像して一人笑った。


山本