お義父さん

今年のお盆休みは、遠出をすることもなく

実家へ泊まりにいったり、お墓参りに出かけたりとゆっくりと過ごせました。

16日(日)のお盆最終日には、あいにくの雨の為自宅でのんびりと過ごす予定だったのですが

ふと昨年亡くなったお義父さんの畑の事が気になったのです。


(あ、そう言えば、2ヶ月以上、草を刈っていないなあー。)と

小雨の降る中、すぐに草刈り機を車に積んで畑に向かいました。

僕の目の前には

総面積100m×30mの畑いっぱいに生い茂った1m級の雑草の海が広がります。


(こりゃーすごいなぁー・・・・。

 お義父さん、ごめんね。すぐに畑を元通りにするからね。)

畑に向かって手を合わせた後、草刈り機を始動させ、雑草ジャングルに突入しました。

気分はまさに戦場に向かうランボーです。

(おりゃ―。雑草やろー。イッキにこのタンボー様がなぎ倒してやるぜー。)

キュイーンーーーーとすごい勢いで雑草が苅られていきます。

し、しかーし です。

気弱で心配性なナベちゃんは、ある事が急に気になり草刈り機をあわてて止めてしまったのです。

(ダメよ~♡ダメダメ!雑草だって生き物。畑の一部なんだもん。

     礼を施した上で苅らなければ罰が当たるし、お義父さんもきっと悲しんじゃうよ。)

と心でつぶやきながら、黙想とともに手を合わせて拝みました。

(雑草さん、苅らせていただきます。よろしくご理解下さい。南無南無)と・・・。

律儀で信心深いナベちゃんは、なんて面倒くさい男なんでしょうか?


気合いを入れ直します。草刈り機にガソリン補充してから、再びスイッチをON。

勢い良く、草刈り刃が回転して、畑の中へと突き進みました。第2ラウンドの開始です。


マムシ。出てくるなよ。頼むぞ。)

今度はマムシの登場におびえながらも

腰が引けた状態でなんとか畑の中へ中へと草を刈りながら侵入していきました。

それから30分後の事。サササアササササッーと僕の足下から突然、何かが飛び出してきました。

「ヒエ~」とびっくりして腰を抜かした僕の目の前に現れたのはーーーーー

何てことはない、ちょっと大きめのバッタでした。


「ハアーハアーハアーハアー」

情けない事にこの瞬間から息が絶え絶えとなり、頭がクラクラしてきました。

心臓もバクバクとなり意識が朦朧としてきました。さらに全身からは汗が尋常ではないくらい吹き出してきます。

今思い返せば、脱水症状を起こしていたのかもしれません。


(おいおい。バカたけし!こんな事ぐらいで負けてたまるか。まだ1/3も終わってないやんか!

               これからが勝負や!立つんだだけし~。負けるなたけし~~~)

と何とか息を吹き返し立ち上がろうとしたまさにその時

一匹のシオカラトンボが僕の近くに飛んできたのです。

そして何度も何度も僕の身体の周りを旋回していきました。

不思議な事に何回も何回も飛び回り、気がつけば5分くらいが経過していたのです。


「あ!もしかしてお義父さん!お義父さんですね。」

自然と僕の口からこのセリフが・・・・・。

その瞬間、シオカラトンボは上空高く飛んでいってしまいました。

呆然と佇む僕の全身には力が抜け、しばらくは立つ事がままならぬ程の状態でしたが

すぐに体力は回復して立ち上がる事が出来ました。


(お義父さん、助けてくれたんですね。ありがとうございました。)

信じてもらえないかもしれませんが

あのシオカラトンボはお義父さんだったと今でも信じています。


一生忘れる事が出来ない最高のお盆での一時となりました。

                           渡部でした。

次は「差し入れピノ親父」こと 田崎さんです。