バターご飯!

平安寿子さんの短編集に「バターご飯」がでていた

(『恋はさじ加減(新潮社)』。

つくりかた(?)はとても簡単で、

炊き立てのご飯をお茶碗に半分ほどもり、

真ん中を気持ちへこませる。

そこに1.5センチ四方のバターをのせ、

そこにすかさず新たにご飯をよそう。

そして醤油をまわしかけ、

全体をよくかき混ぜる。という、

ただそれだけの「料理」法。


「コクがあり、それでいて、くどくない。

それなのに、どっしりした食べ応えがある。

ご飯とパターと醤油。

和と洋のシンプルな融合は重量感と気品が同居して、

まさにパーフェクト。

 欠点は、あまりのおいしさにおかわりをしたくなることだ」

なんてかかれると、すごくおいしそうだ。

さっそくためしてみる。


やってみるとわかるけど、

たしかにおいしものの、

そうおおさわぎするほどのものではない(あたりまえ)。

マクラにすぎない「バターご飯」について、

じっさいにつくりたくなるほど巧みに描写した

平安寿子さんの技を素直にみとめたほうがよさそうだ。

「バターライス」ではなく、

「バターご飯」としたところがまずうまい。

おなじ本の別の短編には、ポテトサラダサンドがでてくる。

これもまたその気にさせられて、

のこりもののポテトサラダで朝ご飯にサンドイッチをつくった。

この手の料理をああだこうだとたのしめるのは、

けっこうしあわせなことかも。

(吉田 淳)