ハオユ? 確実につうじるカタカナ英語

I agree with her.

がちゃんといえて世界中から祝福される吉田くんのCMに

のけぞりました。

ありえないけど気もちはじゅうぶん理解できる「夢」です。

わたしにも、外国ががつうじなくてかなしいおもいをした経験がなんどもあります。

ちょうど英語学習についての

画期的な本にであったところだったので紹介します。


『怖いくらい通じるカタカナ英語の法則』(池谷裕二講談社

池谷さんはアメリカ合衆国に留学したとき

英語がつうじずにくるしみます。

あるひ同僚から「ハゼゴン」とよびかけられ、

意味がわからずきょとんとしていると、

相手は How-is-it-going(元気かい)

とゆっくりいいなおしてくれました。

おお!ハゼゴン!!

ハウ イズ イッツ ゴーイング とはまったくちがうけど、

ハゼゴンといえばみんなにこやかに返答してくれます。

池谷さんは、学校でならった英語とあまりにもちがう発音なのにおどろき、

「これまで当然とばかり思っていた発音がじつは間違っている」

ことに気づきます。

ハウ イズ イッツ ゴーイング では、

たいていはうまくつうじません。

では、なぜわたしたちは

ハウ イズ イッツ ゴーイング

だとおもいこまされてきたのでしょう。

『「Shut up」 を「シャラップ」と正しく言えるのだから、

「Get up」 「Sit down」 も「ゲラプ」「セダン」』

といえばいいわけで、

そのための法則がこの本にはくわしく説明されています。


脳生理学的に(著者の専門)、9歳までに母語への専門回路ができあがるので、

それ以降に日本語の発音にない「R」や「L」の英語の子音の発音をならっても

完璧な習得は不可能なことがあきらかになっています。

池谷さんは3つの結論にたどりつきました。


結論1 私はカタカナ発音しかできない。

    これは「日本人として生まれ育ったのだから、

    いまさら英語特有の発音を身につけようがない」

    という科学的根拠から来る諦念です。

結論2 それ故に私の発音は本来の発音からひどく

    かけはなれたものであって、

    アメリカでは通用しない。

結論3 しかし、私のカタカナ発音を別のカタカナに

    置き換えることによって、多くの場合は

    通じさせることができる。


重要なのは「結論3」です。

池谷さんはこれについて研究をかさね、

13の発音の法則を「発見」しました。

こういうふうにおきかえてカタカナを発音すると

つうじやすくなるという「きまり」です。

「カタカナで英語を」という本はそれまでにもたくさんありました。

池谷さんの本がそれらとはちがってすごいところは、

これらのこまかな法則を「発見」したことにあります。


たとえばこんなかんじです。

・「最後の L はウ」の法則

beautiful

 ×ビューティフル

 ○ビューレフォウ

・「I は エ」の法則

 business

 ×ビジネス

 ○ベゼネス


実践編にはいります。

How are you?

 ×ハウアーユー?

 ○ハオユ?

池谷さんの説明では

『How は「ハ」で十分通じます。

are you は「オユ」でしたね。

これを続けると「ハオユ」となります。簡単ですね』

となります。

『are you は「オユ」でしたね』

といいきってしまうところがすごい。

なんだか英語ではなく、べつの言葉を勉強してるかんじです。

It is yours, isn't it? (君のだよね?)

 ×イッツ イズ ユアーズ イズント イット?

 ○イツユオズイズネッ?

『isn't it の発音は nt が母音で挟まれていますから、

例によって t の脱落が起こって「 isn'it(イズネッ)」

となります。「伊豆ね?」と発音すればよいでしょう』

Do you want to listen to music? (音楽でも聴くかい?)

 ×ドゥーユー ウォント トゥー リッスン トゥ ミュージック?

 ○ジュワナ レスナ ミューゼッ?

こうなると、もう「英語」の練習、というかんじがしませんよね。

ドイツ人がしゃべるスワヒリ語を連想してしまいました。


この本の利用について池谷さんは

「読本ではなく練習ドリル」であることをおさえられています。

奇をてらったようにみえるこの学習法でも、

じっさいには時間をかけてじっくりトレーニングするしか

上達の道はありません

(池谷さんのおすすめは最低70回の反復)。

この本は魔法のような効果・ちからをうたっているわけではなく、

「英語の習得は努力あるのみだ」という、

当然の原則にそって、それ相応の努力をもとめています。


英語を母語とするひとにぜひ「ハゼゴン」とよびかけてみたいけど、

まだそのチャンスがおとずれません。

「ハオユ」もそうとうすごいので、ぜひつかっていみたい。

いっぽうで、そもそも英語がつうじなくてこまるよりも、

そのまえに、まず相手がなにをいっているのか

わからないのでおてあげ、というのがいまのわたしの実力です。

「つたえられるようになる」よりも

まず「ききとれるようになる」ことを期待して

このカタカナ英語の習得にはげもうとおもいます。

(吉田 淳)