リスクマネジメント

リスクマネジメント。最近良く耳にする言葉です。

辞典を引くと

「経営活動に生じるさまざまな危険を、最少の費用で最小限に抑えようとする管理手法。

危機管理。危険管理。リスク管理。」

と表記されています。

なぜ、今回、リスクマネージメントに関する話題を書こうと思ったのか?

それは、最近、京都観光地での軽自動車暴走事故や

同じく、京都を皮切りに起こった小学生を巻き込んだ自動車事故

そして日曜日に起きた観光バス事故と、偶然とは思えないほど続いた自動車事故がその発端でした。


自分でのリスクマネジメントに関する解釈は、

「予測される偶発的や人為的に起きた事故に対して、最大限の努力と工夫で事前防止する、もしくは迅速的確に対処する事でダメージを最小限に抑える考え方」

というものでした。


信じられないくらいに、この日本の地で、痛ましい事故が続いている現状に対して

今回幸いにも事故に巻き込まれなかった僕たちこそが

真剣に再発防止に取り組まなければいけないと強く感じています。

いつ、自分たちにも同じような事が起きるのか

そのくらいの緊張感を持ってリスクマネジメントを遂行しなければいけないと思います。


被害者及びその家族はもちろんの事

加害者とその家族もみんなが不幸のどん底にたたき落とされてしまいます。

業縁という一言ではすまされません。あまりにも多くの人たちの精神をズタズタに傷つけてしまう。

だからこそ、同じような事故が二度と起きないように

もしくは起きた時にも最小限のリスクで済むように適切な判断ができるように

僕たちが再発防止のための方策と実践に日頃から全身全霊で取り組まなければならないと思います。


京都の軽自動車事故に焦点を当てて考えてみます。

容疑者の男性は、てんかん持ちでした。

現在でも要因がてんかんなのか調査中なので一概に言えませんが

何らかの原因でタクシーに衝突したと予測されます。

気がついた時には恐らく

「あ~やってしまった。どうしよう。」

といった感じで

パニックになったのではないでしょうか?

そして、現実から逃避するかのごとく、暴走をして、最悪の結果へと。


ここでリスクマネジメントの考えが活かされます。

想定される事故に対して日頃より訓練を積んでいれば

タクシーにぶつかった時点で冷静に事故対応ができていたのではないでしょうか?

それ以上の被害者はなかったはずです。


もう一つ大事な考えがあると思います。

それは「信頼」

会社、お客様、地域の人々等、の自分に対する

会社に対する信頼が深ければ深いほど

事故後の対応は間違いなく変わっていたと思います。

信頼を感じる事で、それが自信を生み、冷静な対応へと繋がっていく。


情報によればとてもまじめでやさしい評判の良い従業員だったと聞きます。

家族想いで、いつも親やお姉さんの健康を気遣っていたそうです。

てんかんの件についても運転の件を含めて真剣に悩んでいたそうです。

せめて、その人たちには彼や家族の心の支えとして

はげましつづけてほしいと思います。

コメントを聞く限りでは多くの人から

「信頼」を勝ち得ていたような気がします。

「では、なぜ?」

やはり、信頼という車輪と共に

「リスクマネジメント手法」の車輪が働かなかったからと僕は思います。


7人の尊い命は帰ってきませんし

彼の行為は決して許されるものではありません。

彼の家族は一生、被害者家族へ誠心誠意償わなければいけません。


ただし、その家族も僕たちと同じ人間です。

精神の限界があります。

最悪の事態が起きない為にも、彼とその家族にも心の支えが必要です。

不謹慎と言われるかもしれませんが

今まで彼やその家族との信頼を築いてきた人たちは

暖かく支えてあげてほしいと願っています。


ただし、マスメディアに出演されている人たちから言わせれば

「日本人の悪い所は加害者とその家族に対しての人権を守ろうという姿勢が強く感じるのですが、本末転倒だ。」

というようなたいへん厳しい意見を多く耳にするのですが

僕にして言わせればあきらかに間違っています。


本来の日本人の大切にしてきた考えでいえば

加害者の家族の人たちにも手を差し伸べるべきです。

特に今回の件にいわせていただければ

加害者の意図的、計画的犯罪ではなく

不注意や病気による事故という事を鑑みれば、なおさら、そう感じます。

いや、そう感じてほしい。


では、僕が勤務している福祉の世界では

どのようにリスクマネジメントを考えていけばよいのでしょうか?

特に僕たちの仕事の一番の目的は利用者の尊厳を大事にしていく事。

もちろん、事故に関してのリスクマネジメント対策は

事業所として十分に取っておかなくてはなりませんが

それはあくまで手段です。

一番は、僕たちのサービスを通して

利用者、その家族、そして地域の人たちからの「信頼」を得る事です。

事故対策を第一にする事で

活動自体が消極的になり、何をするにしても「安全第一」の掛け声の下

本来の利用者へのニーズをくみ取る事はできなくなる恐れがあります。

まずは利用者への尊厳を守る事。

そして安全管理、事故対策を日頃から徹底する。

この両輪がバランスよく回転してこそ、本来の目的を見失うことなく事故防止対策に取り組めるはずです。


もうこれ以上、被害者も加害者も含めて、哀しむような事故が起きないように

日本中のみなさんが当事者意識を持って

事故防止の取り組みに危機意識を持たなければいけないと強く思いました。          

                                渡 部