【闇の子供たち】を見て

以前から気になっていた映画がありました。

坂本順治監督の「闇の子供たち」(値札のついた命)がその映画です。

内容は、タイで行われているとした

臓器移植を目的とした幼い子供たちの

人身売買や幼児売買春を描いた社会派の作品です。

バンコク国際映画祭に出品を予定されていたそうですが

主催者側が

1タイ国内での無許可での撮影

2内容が観光促進にふさわしくない

3タイの暗部を強調し国のイメージを損なう

4子供の人身売買をテーマとすることは認められない

などの理由で急遽、上映中止となった話題作です。


阪本監督は

以前ドイツの映画クルーが同じテーマで撮影を試みた際

地元マフィアに銃で襲われ妨害されたことを知り

「背筋が凍った」と言っています。

それでもタイでのロケにこだわり

また、日本の俳優、タイ人の俳優と

どう表現するかについて議論を重ね

日本の俳優もタイの俳優も納得して『全部分かった』という返答がないと

撮影には入らないという細心の配慮をしたそうです。

撮影中に急性の失声症になりながらも最後まで撮り続けた坂本監督。

まさに命がけで撮った作品ともいえるでしょう。

だからこそ、余計にでも気になっていたのかもしれません。


ただし、テーマが重すぎる為、なかなか見るまでの勇気がありませんでした。

何度もビデオレンタル店に行っては手にするものの、結局は借りずじまい。

その映画を意識するようになってからとうとう1年が過ぎてしまいました。


今週の水曜日。お笑いのDVDでも借りようとレンタルビデオ店へ。

やはり、この時も「闇の子供たち」のDVDを自然と手にしていました。

一度は棚に置き、お笑いコーナーに向かったところ

向い側の棚にももう一つの「闇の子供たち」がたまたま僕の視界へ。

ちょっと大げさに感じるかもしれませんが、

(これも運命?)と感じて、やっとのことで借りることができました。


観賞後の感想は、

一言では言い表せないです。いろいろな思いが頭をよぎりました。

(正義とは何だろう。)

(理不尽な欲求に対して自分は戦っているのだろうか?)

(生死について自分は分かっているのか?)

(僕は反社会的な行動に対してあの人たちのように立ち向かうことができるのだろうか?)

(同じ地球上で、こんなにも自由や平和の格差があっていいのか?)

等、たくさんの思いが交錯しました。考えさせられました。


ラストが想定外の衝撃的な結末で、【あぜん】としてしまいました。

ただし、見終わった後も後悔の気持ちはありませんでした。

重々しいテーマの映画ではありましたが、心から見てよかったと思います。


最近、「どうでもいいや。」と現実逃避しようとしていた自分への

強烈なメッセージをこの作品から教えられたような気がします。

ずっとレンタルの棚から

「あなたにはぜひ、見てほしい。」

と呼びかけてくれていたような気がしました。                                                渡 部