中村憲剛がかえってきた

川崎フロンターレにケンゴがかえってきた。

ACLアジアチャンピオンズリーグ)の城南戦(2月23日)で

アゴを骨折しながらも、

そのまま試合終了までプレイしつずけたケンゴ。

だんだんもうろうとしてきて、

「かなりやばい」とおもっていたそうだ。

それでも交代をもとめない。

やさしい顔をしてるのに、やることがすごい。

ひとのほんとうのつよさとは、

こういうところにあらわれるのだろう。


2006年の7月、

オシムさんが監督をするとすぐに代表によぼれる。

チームのスタイルを体現する

中心的な存在として活躍した。

岡田監督にかわってからは

不動のメンバーではなくなってきている。

ケンゴがいるといないとでは

ぜんぜん攻撃のリズムがちがうのに。


笑顔と猫背、それになんとなくあかぬけない、

泥くさいプレイスタイルだ。

でも、ケンゴはどんなときでも手をぬかない。

守備でも攻撃でも、献身的なプレイが目をひく。

気がよわそうにみえるけど、

相手にとってとても危険なボールのだし方をする。

おおきな目が、ときどき涙目になったようにみえる。

でもケンゴはあきらめない。

なんだか相手とたたかっているというよりは、

自分をもっとなんとかたかめることのほうに

力点をおいているようにみえる。


骨折をしたときとおなじ城南相手の試合で(4月14日)、

50日ぶりにホームのピッチにたつ。

それまでも、

サポーターはずっとケンゴの名前をよびつづけていた。

みんなケンゴがだいすきなんだ。

この試合にまけると川崎はACLの予選敗退がきまる。

だからこそ、なのか

ケンゴコールがなりやまない。

いや、そうではなくて、

みんなケンゴがベンチにいることをしっていて、

だまっていることができないのだ。

そして、2対0とリードした後半の20分すぎ、

選手交代でケンゴがあらわれると大歓声がおこる。

すぐにケンゴらしいパスを何本もみせてくれたし、

PKをさそうスルーパスもだした。

50日のブランクをまったくかんじさせない。


W杯まであと2ヶ月をきり、

代表へのプレッシャーがきつくなっている。

4月7日のセルビア戦は0対3と完敗だった。

代表のポテンシャルにおおきな疑問符がつけられている状況だ。

でも、いまさらどうしようもない。

自信をうしなわず、

代表チームのいい面をだしてもらうしかない。

それには、ケンゴぬきにかんがえられない。

ケンゴがいなければ、あつみがあり、

意外性のある攻撃はうまれない。

ケンゴの復帰がまにあって、

ほんとうによかった。

(吉田 淳)