親離れ、子離れ

 隠岐で一人暮らしをする80歳の母に、1週間に一度電話を入れている。

なぜか、宍道湖沿いの国道を走って大山が見えると携帯電話に手が伸びてしまう。

「かわったことはない」「元気か」などお互いの近況を伝え合う。

もともと末っ子で、甘やかされて育ってきたせいか、いつまでたっても母離れができない。

シワシワになった手や顔を見ても、母はいつも子供の頃に見た母のままのように映る。

きっと母も、小学校だったころの手のかかる息子のようにみえているだろうな・・・。


 先日こだまの利用者のお母さんと子離れ、親離れの話をした。

「いつまでも、子供のことだけでなく、これからは自分のために時間を使ってくださいよ」

などと偉そうな台詞を言っていたのに・・・。現実は、実は自分も母離れできていなかった・・・。


 それに、子離れもできていない。結局は子供のいいなりになっている。

一生けん命父親風を吹かせているのに、いつの間にか子供の調子で物事がすすんでいく・・・。

なんだか、子供たちもこの流れを読んでいて、結論を長引かせているような気がする。

まんまと子供たちのペースにはまっていくのだ。

なんだか、情けない父親だ!


そんな情けない父親を一番慕ってくれているのが

愛犬の『ひなちゃん』である。

最近のひなちゃんは、あさ新聞を読んでいると

後ろから前足の爪でカリカリと背中をかいて

遊んでー、遊んでーとモーションをかけてくる。

くるっと振り向くと、ソファーの上をぴょんぴょんととび跳ねて

はしゃぎ廻っている。

ひなちゃん離れもできなくなってしまう・・・。

                  情けない父親 山田