登山からえる大きな宝物とは?

意外に思われるかもしれませんが、17年前のサラリーマン時代に僕は会社のアルペンクラブに入っていました。ただし、理由は「半強制的に先輩に誘われた。」という情けないもので、登山愛好家の人から見れば「山をばかにするな!」と怒られるかもしれません。「山が好きだから」とか「挑戦したい。」といった前向きな理由は一つもありませんでした。

うる覚えなのですが、確か「数年後にエベレスト登山に挑戦する。」というあまりにも巨大な目標を掲げていた本格的なクラブで、その激励会に参加した記憶があります。意欲もなく、知識もない自分が、どうしてこんな場違いなところにいるのだろうか?と思いつつも、本音を言う勇気もなく、その場しのぎで先輩方と調子よく話を合わせていました。

「山崎(旧姓)、お前もエベレストに行ってみるか?」

「あ、ハイ、行きたいです。あの世界最高峰の山ですよね。」

「よし、わかった。お前もメンバーに入れるように頼んでやる。」

「はい、ありがとうございます。」

そんな会話だったと記憶します。アルコールの勢いも手伝って、調子よくOKしてしまったのでしょう。また、この時期は、まだまだ若く、無知な青年でしたので、勢いで「自分の体力なら登れるだろう。」という過信があったのでしょうね。

結局は、その1年後に会社を辞めてしまったため、エベレスト登山の挑戦は実現しませんでしたけど・・・。


何で今回のブログで急に登山の話をしたかといえば、以前ラジオのパーソナリチィーを勤めていた片山右京さんのそのラジオのオープニング曲を耳にしてしまったからです。

みなさんもご記憶のことと思いますが、片山さんといえば、年末の富士山登頂中に大切な友人を登山事故で亡くしてしまったあの件のことです。幸いにも片山さん本人は何とか無事に下山したのですが、精神的ショックは大きかったようで「自分がすべて悪いのです。」と号泣した記者会見は衝撃が大きく、今でも記憶に残されています。

「片山さんはよくやった。自分を責めないで、亡くなった友人の為にも一日でも早く元気になってラジオに復活してほしい。」と願っていたのですが、残念なことに、パーソナリチィーを降板されました。あの事故から立ち直るためには、まだまだ時間がかかるのかもしれませんね。ゆっくりと静養してから、再び、元気な姿を見せてくれることを願います。


山での遭難事故は、毎年のように起こります。それも何件どころではなく、毎年、何十件と立て続けに起こっています。「え、また。」と思われる方も多いでしょう。それにもかかわらず、毎年毎年、危険を顧みずに冬山を登る人たちが後を絶ちません。それはいったいなぜなのか?いつも僕は不思議に思っていました。


僕の大好きだった後輩の一人も山で命を落としています。亡くなって2年。あの時は本当に悲しかったです。信じられなかったし、信じたくなかった。とてもタフで、とてもあたたかい人間でした。僕の中では特別な存在でもありました。気さくで偉ぶったことのない人間でしたが、近いようで遠い存在でした。だからこそ、登山家の気持ちが知りたいと思うようになったのでしょうか?


そこで野口健さんの本を探してみたのです。以前も読んだことがあったのですが、もう一度読み返して登山に挑戦する人の気持ちを知りたくなりました。

野口さんのきっかけは1冊の本だったそうです。その本とは冒険家の植村直己さん著作の「青春を山に賭けて」という作品です。落ちこぼれで自分に自信の持てなかった植村さんが山に出会い、登山を成功させる度に自分を取り戻していくという内容だったそうで、当時、自身も落ちこぼれで希望を見出せなかった野口さんが自身の姿をシンクロさせたのでしょう。読んだ瞬間に「これだ!」と感じたそうです。

そこから一度も登ったことのない山々に無性に登りたくなり、そしてすぐに実行に移した野口さん。大きな障壁が立ちはだかっても、「あきらめない。必ず登るんだ。」という強い気持ちで不可能を可能にしてきたそうです。


登頂に成功し、そこで見た景色は、この世とは思われないほどの神秘的なものだったそうで、この景色の前では全ての不安や悩みなどがきれいに消えて真っ白な気持ちになっていたそうです。その景色とはどんなものなのでしょうか?


僕は本当にその景色が見たいのだろうか?怖さが勝っているようにも感じるのですがどうしても何かが気になります。


でも、今まで自分に自信がなくて、将来に希望が持てなかった人たちが、その景色を見ただけで、その景色の力だけで、全ての負の要素を吹っ飛ばしてくれるなんて、それこそ神秘的なことのように思います。

命を賭けてまでも引き寄せられる登山とは、どういうものなのか?怖いけど興味が沸いてきます。一つ一つの山を登った後に味わえる「真っ白な気持ち」とはどんなものなのでしょう。僕にはわかりませんが、いつか登ってみたいような気がしています。

                                      渡部




原田さん、いかがおすごしですか? 1枚目のカードです。