なぜヘボン式なのか

パスポート申請のためにタウンプラザをたずねる。

なにげなく受付のテーブルをみていたら

ヘボン式以外でもみとめます」とはりだしてある。

わたしはまえからヘボン式がきらいだったので、

すぐにといあわせた。

ヘボン式ローマ字についてすこし説明すると、

英語をはなすひとにとっては都合のいいつづりだが、

それ以外の言語をつかうひと、

なによりも日本人にとっては

不規則な活用がわずらわしい。

なぜ、たとえば

「たちつてと」が

「ta chi tsu te to」と

不規則な変化をするのか。

「ta ti tu te to」とかくほうが

(この表記法が「日本式」とよばれるもの)

あきらかに合理的である。

ローマ字は、アルファベットをつかって

日本語をかくことであり、

英語をはなすひとだけにこびる必要はまったくないのだ

(ここらへんはすべて梅棹忠夫氏のうけうり)。


というわけで、受付の女性に

これまでつかってきた

yoshida jun を

yosida zyun にかえたいことをつたえる。

その方は、わたしのいわんとすることを

案外まともにうけいれてくれたけど、

ちょっと対応にこまられる。

受付の方がいうには、

はじめてパスポートを申請されるひとには

ヘボン式以外でもうけつけるが、

これまですでにパスポートをもっているひとについての

変更はむつかしい、ということだ。

納得できないのでくいさがると、

別のひと(おそらく上司)に相談された。

10分ほどまってむこうがだしてきた変更のための条件は、

yosida zyun という表記を

日常的につかっているという証明に、


1「宛名に yosida zyun とかかれた手紙

2「yosida zyun」 とかかれたクレジットカード

3「yosida zyun」 とかかれた名刺

を用意してほしい、ということだった。


めんどくさいけどむつかしいことではない。

手紙の宛名は金沢にすむともだちにたのんだ。

クレジットカードは電話で説明すると

簡単に変更におうじてくれた。

名刺は「日本式ローマ字松江支部会長」とでもして

自分ですぐにつくれる。

やれやれと安心して念のためにパスポートをみると、

まだ有効期限が1年以上ものこっており、

申請の必要がないことにいまごろになって気づいた。

yosida zyun

とかかれたパスポートの申請はしばらくおあずけとなった。

(yosida zyun)