人間は怪獣を探すくらい、自由だ

「WEB本の雑誌」のサイトをのぞいていたら、

本の雑誌社営業担当の杉江さんが

高野秀行さんの本についてはなしていた。


高野さんはUMA(未確認不思議動物)でしられる辺境作家で、

わたしも大好きなのでその全作品をよんでいる

(以前このブログで『幻獣ムベンベを追え』についてかいた)。

『怪獣記』という本では、

ジャナワールという巨大水棲動物をさがしに

高野さんはトルコの東部にあるワン湖へでかけている。

現地の研究者にあったり、

ジャナワールを目撃したというひとたちをたずねたり、

ワン湖を1周する調査の度をしたあと、

高野さんはいよいよゴムボートにのって

ひとりワン湖にこぎだすことになる。

この場面で杉江さんは涙がこぼれたのだそうだ。


「湖に出ていく場面で、

人間ってこんなに自由なんだって思ったんですよね。

藤原新也がインドで犬に食われている死体を見て

『人間は犬に食われるほど自由だ』

という言葉を残しましたが、

僕は高野さんの本を読んで

『人間は怪獣を探すくらい、自由だ』と思って」


ゴムボートでの調査といっても、

スクリューのついた本格的なものではない。

幼児用のやすいビニールボートで、

のりこむとたよりなくグニュッとひしゃげてしまう。


「私は板切れを振り回して、漕ぎ出した。

といっても、楕円形のボートだから、

右に漕げば左に、左に漕げば右にくるくる回るだけだ。

見守る仲間たちが大爆笑しているのを聞きながら、

必死で漕ぐが、『あれ~』とマヌケな声がでるばかり、

船はくるくるとミズスマシになっている」


ほんとにいいはなしだ。

怪獣さがしのために大の大人の高野さんが

かっこわるく(そこがかっこいいのだけど)

ビニールボートで湖にこぎだす。

この場面をよんで、どれだけのひとが杉江さんのように感激できるだろう。

「自由」ということの本質を、

この本を適切につたえてくれる。

わたしたちは自由に生きることができる。

その自由はだれもが謳歌できるはずのものだけど、

だれもがそうしているわけではない。


本の雑誌社11月の新刊として

高野さんの『放っておいても明日は来る』

就職しないで生きる9つの方法(高野秀行+とんでもない奴ら)

が発売される。


「辺境作家・高野秀行が組織に属さず独自路線を歩むゲストと

とんでもない生き方について語り合います(中略)。

世間からドロップアウトしているように見えるひとたちが

その落ちた先で見つけたのは、

あまりに自由な生き方でした。

エッセイとしては勿論、

究極の就活本(???)としてもお楽しみ頂けます」


とある。

さっそく予約した。

(吉田 淳)