中古住宅について

最近、中古住宅の看板をよく見かけます。家の周りには、雑草が生え茂り、その場所だけが悲しい空気に包まれている。なぜか、悲しい気分になってしまうのです。「なぜ、売ってしまうのだろう?お金に困ったのかな。それとも、跡取りがいないのかな?」とつい考え込んでしまいます。


人それぞれに家族、健康、そしてお金等、いろいろな悩みや不安をかかえて生きています。ですから、必ずしも家を売ることがいけないというわけではないのですが、自分だったら、どのような状況でも親や祖父が建てた家は売らないような気がするのです。おじいちゃん、おばあちゃん、そして親が住んできた家には、想い出がいっぱいつまっているはずです。もちろん、自分たちが育ってきた想い出もたくさん残っている。しかし、ご主人がいなくなり、誰も住まなくなったら、その家は死んでしまうような気がします。外から眺めても、長く無人の家には息吹が感じられません。雑草が生え茂るのも、その家の「誰か私に気づいて下さい。そして一緒に暮らしましょう。」という心の叫びのあらわれなのかもしれませんね。


核家族化が進む中、必ずしも、親亡き後に子どもが帰り、その家の跡をとるということは難しいのも現実です。私も同じ状況ですから・・。しかし、年に数回でも良いのです。家に帰り、「自分がこの家を守っていくからね。安心してよ。」と掃除などをして元気づけてあげれば、その家には、再び息吹が宿るような気がするのです。そうすれば、離れて暮らす親子も兄弟姉妹も、また天国にいったおじいちゃんやおばあちゃんも安心できるでしょう。唯一の家族の交流場所が存在し続けるのですから・・・。


親、子ども、おじいちゃん、おばあちゃんたち、家族が一緒に過ごせた唯一の場所は家であり、その期間も限られたものです。「中古住宅の看板が減っていく=心の離散家族が減っていく」 につながるような気がします。


共有できる場所と共有できる想い出話は、「家族の絆」をとりもどす最大の良薬となるのではないでしょうか。

                                     渡 部