いつまでもデブと思うなよ
ベストセラー本をよんでるのは、はたしてだれか。
書評家の斎藤美奈子氏は著書『趣味は読書。』のなかで「ベストセラーといわれている本を読んでいる人が私の周囲にはほとんどいない」ことをとりあげている。『「読みたくない。読まなくてもわかる。読むに値しない。ーこうしたベストセラー軽視の風潮はしかし、読書人の間に広くあまねく共有されているといえるだろう』らしい。
『いつまでもデブと思うなよ』(岡田斗志夫・新潮新書)が話題になっている。新聞や雑誌のあちこちでとりあげられているので、ゆるゆるのズボンをはいた著者の写真を目にしたひとはおおいはず。ではブログの読者のなかで、じっさいにこの本をよまれた方はいるだろうか。
ふたたび斎藤美奈子氏によれば
「もし日本が100人の村だったら、40人はまったく本を読まず、20人は読んでも月に1冊以下だ。(中略)純粋な趣味として本に一定のお金と時間を割く人はせいぜい100人の村に4~5人」ということなので、おそらくこだまの関係者でこの本をよんだひとは1~2人ということになる(いったいどういう計算をしたらそうなるんだ?)。
なので、たとえベストセラー本であろうとも、安心してうんちくをたれようとおもう。
岡田斗志夫氏は117キロから67キロへ、1年で50キロの減量に成功した。
というと、「歯をくいしばって」みたいな、つよい精神力が必要かとおもうけど、岡田さんの本をよむとぜんぜんそうではない。すごく簡単でしかも知的でたのしい体験として紹介されている。
岡田さんが実践したのはレコーディングダイエットという方法で、たべたものを記録する、というただそれだけのことからスタートするやり方だ。本のなかでいくつかのポイントがまとめられていて、それにそって実践すれば簡単にやせられるようになっている。「ガマンしない」があちこちにでてくるし、停滞期をむかえたときの工夫や、ついたべすぎたときにでも「後悔しないこと」、また「無理に運動しない」とかの、ありがたくて読者にやさしいアドバイスがちりばめられている。精神力よりも知性をもとめられる点がこわいといえばこわい方法だ。
すこし内容をかきだしてみる。
『実は、どんなダイエットをしても、最初はみるみるやせる。(中略)書かれているとおりに実行すれば、確実にやせられる。問題は、その努力が1~3ヶ月しか続かないことだ。そこで停滞期が訪れ、みんな挫折する。(中略)つまり、ダイエットの失敗というのは「やせないこと」ではなく、「続けられないこと」なのだ』
『やせなければダメだ、とは言わない。
「太っていると損をする」という現実さえ、見えていればいい。
そして、やせることがどんなに簡単か、それさえ知れば、答えはおのずと明らかだ。
やせることは、自分に対してできる最大の経済効果をもたらす。
そして、それはあなたがいま思っている以上に簡単なことなのだ』
ひとにより、適したダイエットはさまざまだろう。からだをうごかすことがすきなひとはトレーニングを中心にかんがえればいいだろうし、根気のあるひとは朝食を中心にした「時間管理ダイエット」でチビチビ体重をおとしてもよさそうだ。本書のレコーディングダイエットは『運動嫌いで怠け者で、でも本を読んだり考え事をするのは苦にならない、いわば「文系のためのダイエット」』と位置づけられている。
簡単でおもしろそう、とおもわれたあなた、本書をおかいもとめのうえ「あたらしい自分への旅」にぜひ挑戦してみてください。
最後に、
『この本を読んだあなたは、もう昨日までと同じ生活を繰り返したくない、とおもいはじめているのではないだろうか?
そう、この本を読んだその瞬間から、あなたの「助走」はもう始まっているのだ』
という著者のメッセージを紹介しておわりとします。
吉田 淳