杉山登志郎氏 最新刊

前回は日付を跨いで更新してしまい、たいへん申し訳ありませんでした。

眠気との戦いの中、戦士渡部はブログと闘っていました。

しかし、X氏は認めてくれません。手厳しいです。

せめてレッドカードを免除して下さい。

よろしくメカドックです。


さて、本題に入ります。


前あいち小児保健医療総合センター診療科部長で

発達障害の子どもたち』の著書でお馴染みの杉山登志郎氏の最新刊

発達障害のいま』

を読んだ。

診療科部長としての9年間で診察した患者から学び得た最新の情報が数多く紹介されていた。

他の精神疾患との関連性や効果的治療、そして数々の事例等

今後の支援で活かせられるだろう貴重な情報を知る事が出来てたいへん為になった。


特に目を惹いたのが、発達障害とトラウマの関連性についてである。

「トラウマ」とは心の傷の後遺症で生じる精神障害を示す。

正式な診断名は外傷後ストレス障害=PTSDという。


発達障害の大人や子どもたちが「トラウマ」を伴いやすいのは

その障害特性から容易に想像ができる。

特に未診断児の場合は

社会性やコミュニケーション能力、そして創造性の障害により

本人の困った感を親がきちんと理解できない場合が多く

虐待行動に発展してしまうのだろう。


では、現在の日本での臨床最前線での「トラウマ」に対する効果的治療とは

どのようなものが存在するのか?

その件についても詳しく説明があった。


特に目覚ましく効果をあげている治療法は

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理治療)

という聞き慣れない治療法だった。


EMDRのもっとも根本的な手技について簡略して紹介すると

患者にトラウマ記憶を想起してもらいながら左右に眼球を動かす

というきわめて単純な技法である。

この眼球運動とともに、トラウマとなっている記憶の想起をおこなうと

不思議とその記憶との間に心理的な距離がとれるそうだ。

信じられない話のようだが、多くの医療現場で多くの患者がこの治療により

トラウマを実際に克服しているという。

そのうちの治療者の一人が杉山氏であり、

何例かのEMDRを受けた患者の治療中とその後の様子がこの本にも詳細に書かれていた。

ぜひ、医療関係及び障害者支援に携わっているみなさんにはこの本を読んでほしい。

このEMDR治療効果の破壊力が実感できると思う。


最初に説明した「発達障害とトラウマ」について戻ると

このEMDR治療が発達障害の大人や子どもにもたいへん有効であり

多くの問題行動や反社会的な行動の解消に成功しているそうだ。

発達障害の特性だけにスポットを当てるだけでなく

その奥底に潜んでいた「トラウマ」に焦点を当ててみることで

より多くの「トラウマ」でもがき苦しんでいる人たちが今後救われていくと考えられる。


以前、腹巻氏が

「日進月歩で解明されている自閉症研究について日々研鑽をつみなさい!」

と研修の冒頭で言われた事が、脳裏によみがえってきた。


支援者だからこそ

「知りませんでした。」

では済まされない。

もっともっと勉強しなければいけないとあらためて思った。            

渡部