口くさ健史の独り言

あれは五月晴れの暖かな日曜日だった。僕の脳裏に鮮明に思い返されるワンシーン。ある女性が顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに

何かを言おうとしていた。もじもじしていたその女性を見て僕は「もしかしたら恋の相談かなあ~。かわいいなあ~。」などどめでた

い想像にふけっていたのも束の間。その女性の口から出た一言が僕の人生を大きく変える一言になろうものなど夢にも思わなかった。

「渡部さん。口が・・。口がく・さ・い。」

ガビ~~ン。と頭をハンマーで打ちぬかれた気分だった。(ちょっと大げさかも)「うそ~。ほんと~。そりゃ~ね~べ~。」。一瞬思

考回路が停止。ショックだった。怒りに震えそうになった。し、しかしである。まずは緊急自制装置が作動。何ともいえない男の悲壮感

漂う作り笑顔攻撃で難を逃れようとした。しかしである。新たな敵が登場。それを聞いていた関係者の一人が僕に向かって「くさい、く

さい、くさい。」のミサイル攻撃を浴びせてきたのだ。それを静止しようとする同志たち。しかし、その同志も必死で笑いをこらえよう

としているのではないか。びっくりである。性善説なんてうそぱっちだ。みんな偽善者なんだ。バカヤロ~。

しかしである。その件がショックになるどころか、時間がたつにつれて気分が高揚してきたのである。「うふふふふふふふ。こりゃ~い

いネタになるぞ~。」と実は喜んでいたのである。恐ろしや~渡部健史。


過去を振り返るとたくさんの惨めな思いを経験してきた。「気色わる~い。」「不気味」等、普通なら人生ドロップアウトである。ねずみ

男でもここまでは言われないだろうという貴重な体験を僕はできたのだ。そのおかげで僕は「打たれ強い。」「忍耐強い。」という長所を

獲得した。最高の天からのプレゼントである。


そういえば、僕の長男の哲平もまだ8歳というのに打たれ強さを習得している。この子はいつも怒られてばかり。僕を筆頭に家族からはも

ちろん、同級生やその保護者、その他多くの方々からお叱りをうけている。しかし、それにもめげず、毎朝、僕を最高の笑顔で送り出して

くれるのだ。

まるで仏様のような子。自分の子だから言うのではない。最近、本当にそう思えるようになった。

哲平は僕にとって鏡のような存在である。僕の汚い汚い部分をさらけ出してくれる。「あ、僕って、こんな欲深いところがあったのか~。」と

何度も気づかせてくれた。本当に感謝、感謝である。


「自虐ネタ」を売りにしようとは思わない。見る人から見れば「日本男児なのに情けない。」と思われる人も必ずいるし、それが間違い

だとは思わない。でも自分の器はそんなもの。それを受け入れたうえで、さらに人間の器が広がるように努力していこうと思う。

でも器を広げるためには、素材を陶器やガラス等の硬いものではなく、ゴムのような伸びる素材にしなければだめなんだよね。変えるには相当な

忍耐力と努力が必要。外にではなく内に鏡を向けてみよう。すれば器が風船に変わってどんどん心が大きくなる。自分は実践し、それを実現した

から自信をもっていえるのだ。


こだまの関係者はみんなあたたかい。本当に素敵な仲間に出会えた。心よりありがとうと言いたい。これからもよろしくね。

                                                        渡部