女は狩れ、男は流されよ

『「婚活」時代』をよむ。

婚活とはもちろん結婚活動のことで、

以前はだれもがなんとなくしていた結婚も、

いまは就職活動とおなじように

結婚にむけての戦略をもたなければ

すんなりとは結婚できない時代となっている。

なぜそういうことになったのか、そして

ではどうしたら結婚できるのか。

この本は、結婚したいのにできない社会的要因、

ネット婚をふくめた結婚情報サービスの実態など、

結婚をめぐる状況がよく整理されている。


 就職も結婚も、

それまでの枠がとりはらわれ自由になったことで

かえって就職できない・結婚できないという不自由な状況になっている。

自由が不自由を生む、というよくある現象である。


「結婚しない人が増えているというと、

一般には自分の意志でそうしている人が増えたからだと思われがちですが、

実際には、まったく逆です。(中略)

就職にしろ結婚にしろ、自由化が起これば思いどおりにならなくなる、

というパラドックスです」


 未婚というと、なんとなく結婚しないことを選択したようにおもうけれど、

この本によるとどうもそうではなく、


「結婚したいのにできない。

さらには、いかにも結婚できなさそうな男性や女性が結婚できないのではなくて、

すぐにでも結婚できそうな感じなのに、結婚できないでいる人たちが、

非常に多い」


 ひとつには相手にのぞむ基準がたかすぎること。

未婚女性の40%が年収600万以上の男性と結婚したいと思っており、

では未婚男性25歳から34歳のうちにそうした男性がどれだけいるかというと、

たった3.5%なのだそうだ。

また、日本女性は上方結婚志向であり、

自分より仕事ができる男性をのぞむことから、

収入のおおいキャリアウーマンも結果的には高収入の男性がターゲットであり、

おなじタイプの男性をおおくの女性がとりあうことになる。


「彼女が結婚できない理由」として

・男はいるが、いい男はいない

というのがあげられている。

「ふつうの人でいいの」というときの

「ふつうの人」がなかなかいない。

「結婚後、女性とうまくやっていけそうな人たちは、

とっくに狩られてしまっている」のだそうだ。

そして、「魅力的な男性というのは、昔からごくごく少数しかいませんでした。

ただ、今と違うのは、女性たちが、魅力的ではない男性と結婚するという

選択肢を強いられなくなったということなのでしょう」

ということも指摘されている。

ものすごくあたりまえなことを、あらためてそういわれると、

いままで結婚を当然のこととしてとらえていたことが、

不思議におもえてきたりもする。


まとめとしての処方せんは

「男性に必要なのは、もっともっと自分を磨いて、

経済力とコミュニケーション力をつけること、

女性に必要なのは、

自分磨きはもう十分ですから、積極的に外に出ていくことです」

となっている。

いっぽう、「結婚しない男」には、

婚活は必要ないそうだ。

この本では「草食系男子」ということばはでないものの、

現在の男性は、

自分が狩られる存在であることを認識しているという前提はおさえられている。

「結婚しない男」は狩られることをおそれないで、

「流される勇気」をもちなさい、

というのがこの本の提案である。


結婚はわかいころだけのイベントではなくなり、

40歳をこえてから、さらには熟年結婚もめずらしいことではなくなった。

このごろでは再婚市場も充実し、

相手の条件を初婚にかぎるよりも、

再婚までを視野にいれたほうが

ずっと条件がよくなるという、

これまでにない状況が紹介されている。


こうしたはなしをよむと、

わたしは再婚市場で

どれだけの値をつけられるだろう、

とつい自分のことをかんがえる(ここだけのはなし)。

経済力はかなりひくいけど、

炊事・洗濯などの生活力は

あんがいポイントがたかいのではないかという希望をすてきれない。

ここでも大切なのはコミュニケーション能力であったり、

あたりまえの気くばりであったりする。

いまの配偶者にみすてられた場合にも

充実した老後をすごせるように、

市場での価値をたかめたいとおもう。

(吉田 淳)